▼About of Kiev

マスダ先生的世界史 キエフ公国とは、高校教科書的には『9C〜13Cにロシアに存在した国』ということになっている。別に間違いではないが、やっぱり「んもう。冷たいじゃないのん」というカンジではないだろうか。
 ワタシはキエフ公国を大学卒論のテーマとして選択した。それ以来、キエフという言葉を聞くとキラリと目の輝く怪しい人間になっている。
 キエフ公国の何が、そんなにワタシを夢中にさせているのか?

1.『古代』ロシアである点
 キエフ公国は、時代的にはお隣のヨーロッパでは『中世』と呼ばれる時代にあたるが、ロシアの中では「古代」にあたる不思議な時期。
 人間には、古代という言葉に対する普遍の憧れがあるような気がする。古代ギリシャ、古代エジプト、古代中国、古代メソポタミア…たいていの人には「あ、そこはワタシのツボなのよ」という場所があるに違いない。そんな「古代」なのである。しかし中世でもあるので、従士団がいたりする力の時代でもある。
 時代の基本『原初年代記』にだって「彼は母が魔法によって生んだのである」なんて記述がちょろりと顔を覗かせたりして、一瞬にして古代への情熱がワクワクとわき上がる、そんな時代なのだ。
2.史料が少ない点
 「史料が少ない」というのは、研究者にしてみれば面白いどころか頭痛の種でしかない。
 けれども、興味本位に調べる分には「史料が少ない」というのは想像力の翼をバッサバッサと羽ばたかせることができて、大変キュートな事実なのである。まるで憲法を読む法学部の生徒のように、原初年代記の行間を読み込んでいけば、アナタだけのキエフ公国が、ほら、目の前に…。
3.なんといっても「人狼公」の存在
 11世紀キエフ公国には「人狼公」と呼ばれる人物がいた。かれは人狼、魔法使いと称されたが、民話の中には「かつ英雄」として登場する。人狼で魔法使いで英雄。しかも彼は、地方の一諸公でありながら劇的な暴動の主人公として、一時キエフの公座に就いたりする。
 こんな人物の存在を知っていましたか?キエフ公国にはウラディミル聖公しかいないと思っていませんでしたか?『キエフ公国』とヒトククリにされた時代の中には、深い世界が隠れているのだ。


※いみじくも研究者としては(今は研究者じゃないけどさ)「キエフ・ルーシ」と呼ぶのが普通だが、このコーナーの目的は『キエフ公国という存在を普及させる』ことであるので、一般的な「キエフ公国」という名前を使っている。