近代ヨーロッパを語る上で避けて通れない一族、ハプスブルク家。なんで避けて通れないかっちゅーと、答は簡単。「マジでどこにでもいる」からだ。
神聖ローマ帝国の諸侯争いが紛糾した結果、有力な七選帝侯の傀儡皇帝として、当時のド田舎オーストリアの大公が選出された。まあ、こういうイナカモンの世間知らずを皇帝に据えといて、実際の政治は自分たちの好きなようにやればいいや、と思ったわけですな。
ところが選ばれたオーストリア大公は、思いもかけない武器を使って、思いもかけない方策に出た。
婚姻政策である。
バイキンとか伝染とか、そういう衛生観念のないこの時代、子どもが生まれてきたからといっても決して安心できない。お家を断絶させないためには、子どもは多ければ多いほどよく、元気でたくさん子供を産む女性ほど「いいヨメ」はいなかったのである。
そして、ハプスブルクさんちの女は「いいヨメ」だったのだ。
ハプスブルク家は「いいヨメいまっせ〜」と各国に宣伝しながら、自分たちの血を確実にヨーロッパ各国にばらまいた。ブルゴーニュ大公をはじめ、スペイン、ブランデンブルクなどなど。当然ながら有力な家系ほど断絶を恐れており、断絶を恐れるからこそ「いいヨメ」を求める。ハプスブルクの血は近代ヨーロッパを席巻していったのである。
こうして「ハプスブルク帝国」ができあがるわけだけど、世界史を学ぶ上で勘違いしてはいけないのは、これは決して「神聖ローマ帝国が強くなったのではない」ということである。
ハプスブルク家は確かに神聖ローマ帝国の皇帝であり、各国に親類をばらまいているけれども、神聖ローマ帝国国内を強力に支配したのではないのだ。
帝国国内には300以上の諸侯や都市があって、これを統一するのは困難を極めた。それより他の国に自分の親戚を送り込めば、苦せずしてハプスブルクの血筋がいつかはその国を支配する。
要するに「ハプスブルク帝国」というのは、一国家を越えた「血筋による国際帝国」という感じなのである。国内ではお飾り、一歩国を出れば押しも押されぬ大皇帝。不思議な感じがするけど、それがハプスブルクだ。
と、ここまでは『「血」って凄いなあ』なんて感じなんだけど、一方で『「血」ってなんだろう』と思う気持ちも生まれてくる。
「血」を理由に何かを制限されたり強制されることなんて、庶民レベルではそろそろナンセンスの域に達しようとしているんじゃないだろうか。きっと、いろんな親は、自分たちの子どもを見て「この異星人みたいな子どものどこに、自分の『血』が流れているんだろう」と思ったりしているはずだから。
現在最も「血」にうるさいのは、もしかしたら「芸能界」という場所なんじゃないのかな、なんて、ワイドショーを見ながら考えたりする今日この頃なのであった。