世界史の授業には、先生にはな〜んも面白みがなくても、生徒から笑いが取れるポイントがいくつかある。宋時代の『北方民族の活動』の項目は、間違いなくその中のヒトツである。
まず登場するのが「耶律阿保機」である。
黒板にこの名前を書くと、生徒は一瞬目を疑い、「ヤリツアボキ」と発してやると、ちょいとざわめく。そりゃそうだ。名前に「アホウ」と書いてある1のである。
こうなってくると、「耶律2」という名前もなんだかそこはかとなく面白くなってきて、その後出てくる「耶律大石(やりつたいせき)」なんかもちょっぴり楽しくなっちゃうのだ。クラスに「大石(おおいし)」がいれば、とりあえず後ろの席のニキビ面の生徒から背中を鉛筆でつつかれたりするに違いない。
そして、生徒たちがなんだかビミョーに違う方向にアンテナを伸ばし始めたそのとき!
「完顔阿骨打」が登場するのである。
ここでクラスの少年少女が一人も笑わなかったら、少年少女たちに笑いというものを教えてあげた方がいい。
とりあえず「ワンヤンアクダ」という読み方を教えてあげると、生徒たちはこそこそこそこそお話に花を咲かせるはずである。
「阿保機」に比べれば、直接的な笑いの単語が入っているわけではないし、「ワンヤンアクダ」という読み方にも特に笑いを誘うものはないハズだ。しかし、並んでいる文字がすべて簡単な漢字であること、1つ1つの文字にビミョーに通じてしまいそうな意味があることが、笑いのツボを刺激するのであろう。
高校時代、ちらりと見た「世界史人物暗記参考書」みたいな感じの語呂合わせで年号や人名を覚えようという主旨の本に、確かその「ビミョーに通じてしまいそうな意味」を文字にしているものがあった。
『完璧な顔で「アーッ」と叫びながら骨を打つ』
素直に「完顔阿骨打」で覚えりゃいいじゃんって感じだったので当時は無視したが、よくよく考えてみれば、これこそがソコハカとない笑いの『ポイント』なのであろう。
完顔阿骨打の名前を見てくすくす笑っている生徒たちは、きっと↑こんな情景をぼんやり思い浮かべて笑っているんだろうなぁ…。

  1. 実際にはアホウは「阿呆」なんだけど、この際ニンベンがあろうとなかろうと、生徒たちの頭から「アホウ」を追い出すことはできないのである。 []
  2. 「ヤルート」って言うらしいけどね、ホントは。きっと中国で漢字をあてたのが日本に入ってきて、思いっきり日本語読みしちゃってんだろうね。 []